シュレーディンガーの猫
『何がおかしいんですか?先輩』
今回はシュレーディンガーの猫ですね。
量子力学の議論で生まれた思考実験ですが、今では創作などでも使い古されている印象がありますね。
ただ、この「シュレーディンガーの猫」という単語だけが独り歩きしていて、中身についてはよく知らない人、あるいは間違った理解をしている人を見かけます。
先輩も、ちょっと自信なさげですか?
そんな先輩のために、順を追って解説していきましょう!
そもそもシュレーディンガーの猫とは
「猫が箱に入っていて…毒ガスが出て…生きているのか死んでいるのかわからなくて…」
という状況はご存知かもしれませんね。
でも、これが何のための思考実験なのか、その目的をはっきりさせておきましょう。
この思考実験の肝となるのは、猫でも毒ガスでもなく「放射性物質」です。
そしてこの思考実験の目的は、「ミクロとマクロを繋げて考える」ということです。
マクロの世界とミクロの世界
シュレーディンガーの猫の思考実験をすることになった原因として、ミクロの世界では私たちが考えられないような振る舞いをすることがあります。
1つの例としてよく挙げられるのが、二重スリット実験です。
これは高校の物理などでも学習した人もいるかと思います。
先輩は高校物理、大丈夫ですよね?
私たちが暮らしているマクロの世界においては、上の図の様な2つの隙間にボールなどを投げ込んだら、当然どちらか一方の隙間を通ってスクリーンにぶつかります。
しかし、ミクロの世界では、電子を1個だけ発射したとしても、図のように幾つかの縦線がスクリーンに描かれるのです。
これは、粒子が途中までは「波」として二重スリットを左右どちらとも通り抜け、最後に「粒子」となってスクリーンに現れる、ということを意味しています。
つまり粒子は、「右側のスリットを通った状態」と「左側のスリットを通った状態」という、2つの異なる状態を同時にとったと考えられるのです。
シュレーディンガーの猫の詳しい状況
先ほど記載した思考実験の状況は不十分なので、きちんと述べますね。
まず、外から中が見えない箱の中に猫を入れます。もちろん生きてます。
次に放射性物質と、放射線を検知したら毒ガスが発生する装置を箱に入れます。
なんだか物騒ですね…。
ここで、放射性物質が放射線をいつ出すかは分かりません。ただし、放射性物質は10分間で50%の確率で放射線を出すことがわかっています。
このとき、先の二重スリットと同じように、量子力学の世界では、放射性物質の原子核が「崩壊した状態」と「崩壊していない状態」が重なり合っているという解釈をします。
そして、そのミクロ特有の2つの状態が重なり合っているという現象を、マクロの世界でも体感するために、放射性物質の原子核崩壊の有無と猫の生死を対応させているのです。
なぜシュレーディンガーの猫の思考実験を提案したのか
この思考実験が提案された目的はなんなのでしょうか。
量子力学の世界では、原子核崩壊などは「10分間で50%の確率で崩壊する」のように確率で決まる部分が数多くあります。
そのため原子核が崩壊したかどうかは
「意識を持った観測者が観測して初めて確定する」
「観測するまでは原子核崩壊の有無は確定しない」
と考える学者もいるのです。
しかし、観測しなくとも、私たちが知り得ることは無いが、原子核が崩壊している場合だって考えられるはずです。
シュレーディンガーもそのように考え、「観測して初めて確定する」と述べる学者に対する反論として、「じゃあ猫が箱の中にいたら生きている状態と死んでいる状態が重なり合うことになるけどこれっておかしいだろ?」 という意味合いとして、この思考実験を提案したというわけです。
また別の機会がありましたら、シュレーディンガーの猫について、もう少し詳しくお話しますね。
今回のお話は以下の雑誌を参考にしています。